骨が弱くなりやすい、風邪をひきやすい、気分が落ち込みやすい…。
そんな不調の背景に関わっているのが「ビタミンD」です。
ビタミンDはカルシウムの吸収を助けて骨や歯の健康を守るほか、近年では免疫の働きを支える栄養素としても注目されています。
食事だけでなく「日光にあたること」でも体内で作られる少し特別なビタミン。
今回は薬剤師の立場から、ビタミンDの働き・過不足リスク・上手な摂り方をやさしく解説します。
ビタミンDとは?骨と免疫を守る脂溶性ビタミン

ビタミンDは脂溶性ビタミンの一種で、食事からの摂取以外にも紫外線を浴びることで体内で合成されるため、「太陽のビタミン」とも呼ばれています。
ビタミンDの主な働きは次の3つです。
- 骨や歯の形成をサポート:骨や歯を構成するカルシウムの吸収を促進
- 免疫機能のサポート:マクロファージなど免疫細胞を活性化
- 心身の健康をサポート:脳の神経伝達に関与し、ストレス耐性に関係
食事からの摂取源としては、魚介類やきのこ類が中心。
厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』では、成人の目安量は男女ともに9.0μg/日とされています。
ビタミンDの働き

骨や歯の形成をサポート
ビタミンDは「骨のビタミン」とも呼ばれ、カルシウムの吸収を助けることで、丈夫な骨や歯の形成に欠かせない栄養素です。
食事から摂ったカルシウムは、そのままでは吸収されにくいのですが、ビタミンDがあると腸での吸収がスムーズに進みます。また、血液中のカルシウム濃度を一定に保つよう、骨の中で“蓄えと放出”のバランスを調整する役割も果たしています。
子どもの場合、骨の発達にビタミンDが不足すると「くる病」という骨の成長障害が起きることがあります。大人では骨密度の低下や骨粗しょう症の一因になることも。特に女性や高齢者は注意が必要です。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」でも、ビタミンDは全年代で“カルシウム利用に不可欠な栄養素”として位置づけられています。
また、骨の健康は単に「折れにくい体を作る」だけではありません。歯の強さや姿勢、さらには転倒リスクの軽減にも関係しています。
免疫機能のサポート
ビタミンDは骨だけでなく、免疫力の維持にも関わっています。
私たちの体には、外から入ってくるウイルスや細菌と戦う「免疫システム」が備わっていますが、ビタミンDはその働きをサポートする“指揮官”のような役割を担っています。
体内で活性型に変わったビタミンDは、免疫細胞(T細胞やマクロファージなど)の働きを調整します。具体的にはヘルパーT細胞などの適応免疫による過剰な炎症を抑えつつ、必要なときにはマクロファージなどの自然免疫による防御反応を高める――このバランスを整えるのがビタミンDの特徴です(参考文献③)。
つまり、ビタミンDは免疫のブレーキとアクセルの両方をコントロールする栄養素。風邪をひきやすい人や、季節の変わり目に体調を崩しやすい人は、ビタミンD不足が隠れているかもしれません。
心身の健康をサポート
最近の研究では、ビタミンDが「心」や「筋肉の健康」にも関係していることが分かってきています。
冬になると気分が落ち込みやすい「季節性うつ」の原因のひとつとして、日照不足によるビタミンDの減少が挙げられています。ビタミンDが脳内の神経伝達物質(セロトニンやドーパミン)にも関わることが報告されており、心の安定にも役立つ可能性があります(参考文献④)。
また、ビタミンDは筋肉の働きにも関係することが分かってきました。筋力の維持は転倒予防など、高齢者の生活機能にとっても重要な要素。ビタミンDが不足している人は筋力低下や倦怠感を感じやすい傾向があると報告され、ビタミンDを補充することで筋力改善や転倒リスクを軽減する可能性が示されています(参考文献⑤)。
まっきービタミンDをどのくらい摂取すれば心身の健康へ役立つのかはまだまだ研究段階。ただ、ビタミンD欠乏症となっていると、心身の健康を崩しやすいことは多くの研究で示唆されています
ビタミンDは骨だけではなく、心と体を支えるビタミンとも言えます。
「最近なんとなく元気が出ない」「日差しを浴びる時間が少ない」と感じるときは、食事や日光からのビタミンD補給を意識してみましょう。毎日の小さな積み重ねが、心身のバランスを整える大きな一歩になるかもしれません。
ビタミンDの摂取量と過不足リスク


ビタミンDの摂取量
ビタミンDは骨や歯の形成の他にも、免疫などに関与することが分かってきましたが、1日にどれくらい摂取すれば良いのでしょうか?
厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』では、成人の目安量は男女ともに9.0μg/日と設定されています。これは、日光に当たることでビタミンDが体内で合成されることも加味した値。どのくらい体内で合成されているのかは、生活習慣や環境などで変わります。そのため、日に当たる機会が少ない方は特に、目安量を意識した食事内容にすると良いでしょう。



ちなみに、日本の健診者を対象として血中のビタミンD濃度を測定した調査では、約50%の人がビタミンD不足と判定されました
ビタミンDの不足リスク
ビタミンDが不足すると、十分に骨の形成ができません。そのため、子供では「くる病」、大人では「骨軟化症」や「骨粗しょう症」のリスクが高まります。
また、ビタミンD欠乏症と免疫力低下や筋力低下、気分の落ち込みなどの関係も示唆されています。
ビタミンDの過剰リスク
食事由来ではまず問題ありませんが、サプリメントなどによる過剰摂取には注意が必要です。ビタミンDが過剰になると、腸内でのカルシウム吸収も過剰となり高カルシウム血症を起こすことがあります。高カルシウム血症では倦怠感や吐き気などの症状の他、腎機能にも影響することがあるため注意が必要です。
厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2025年版)』では1日の上限の目安として、成人男女で耐容上限量100μg/日が設定されています。
ビタミンDの摂り方


ビタミンDの摂取量の目安は分かりましたが、みなさんは十分な量を日頃から摂れていますか?
厚労省の調査では、働き盛りの20代~50代の平均摂取量が1日9.0μgに届いていないことが分かっています(参考文献⑥)。
ビタミンDの摂り方は主に3つ。
・日光浴
・食事
・サプリメント
それぞれの方法について見ていきましょう。
日光浴でビタミンDを合成する
ビタミンDは紫外線を浴びると皮膚で合成されます。ただ、皮膚で合成するために浴びる必要がある紫外線は、日焼けの原因にもなるため、長時間浴びるのは注意が必要です。
では、1日でどのくらいの時間浴びれば良いのでしょうか?
季節や時間帯、服装や皮膚のタイプなどでも変わりますが、多くの日本人では下記の時間が目安となります。
- 夏:5~10分
- 冬:30~40分
冬の日差しが弱い日は1時間ほど必要な場合もあります。連続ではなく、短時間を何度かに分けても大丈夫。



日焼け止めを使用している場合は、ビタミンDの合成に必要な紫外線を遮ってしまうため要注意です
食事でビタミンDを摂取する
ビタミンDを含む食材
食事からの摂取源としては、魚介類やきのこ類が中心となります。代表的なものを表にまとめました。
| 食材(1食分の目安量) | 含有量の目安(μg) |
|---|---|
| 鮭(切り身・約80 g) | 約 25.6 μg |
| いわし(丸干し・1尾約30 g) | 約 15.0 μg |
| さんま(1尾・約100 g) | 約 14.9 μg |
| サバ缶(水煮・1缶約200g) | 約 22.0 μg |
| しらす干し(大さじ2・約10 g) | 約 6.1 μg |
| 鶏卵(1個・約60g) | 約 2.1-2.3 μg |
| 干ししいたけ(2個・約6g) | 約 0.8 μg |
| きくらげ(2枚・約2 g) | 約 1.7 μg |
| 舞茸(生・約50g) | 約 2.8 μg |
| えりんぎ(生・約50g) | 約 0.6 μg |
きのこは種類によってビタミンDの含有量にかなり差が出ます。表に記載した以外ではひらたけは含有量多め。しめじやマッシュルームなどはごくわずかです。きのこでビタミンDの摂取を考える場合には、種類選びにご注意ください。



ビタミンDは油と一緒に摂取すると吸収率がアップします
実践!ビタミンDを毎日の食事に取り入れるコツ
実際に普段の食事に取り入れる方法をまとめましたので、ご自身の生活で実践可能なものがあれば参考にしてください。
朝:1日のスタートに手軽にビタミンDチャージ
- しらすトースト+ゆで卵+牛乳
→ トーストにマヨネーズ+しらす+チーズをのせて焼くだけ。相性の良いカルシウムも一緒に。 - 鮭の塩焼き+ご飯+味噌汁
→ 定番の和朝食。鮭1切れで25μg前後のビタミンDを摂取可能。 - ヨーグルト+キウイ+干ししいたけ入りオムレツ
→ ビタミンCを含むフルーツを組み合わせることで免疫サポートにもつながります。
昼:外でもビタミンDを意識して
- 舞茸の炊き込みご飯+玉子焼き
→ お弁当の中身として。魚のおかずも足せると◎ - 焼き魚定食
→ 外食でも選び方次第でビタミンDを摂取可能。 - 鮭おにぎり+ゆで卵
→ コンビニ食でもビタミンDは摂れます。きのこの味噌汁もあれば◎
夜:1日の疲れを癒しながら体を整える
- サバ缶カレー
→ 野菜を加えればビタミンDやたんぱく質以外にもビタミンCや食物繊維を摂取可能。 - 鮭ときのこのホイル焼き
→ 鮭の旨味ときのこの香りで満足感アップ。 - 豆腐としらすの卵雑炊
→ 胃腸が疲れている夜にもおすすめ。温かい雑炊で体を内側から温め、吸収効率も◎。
サプリメントで補う
多忙な日々を送っているなど、食事だけで栄養バランスを整える余裕がない場合もあると思います。そんな時は、ビタミンDを含むサプリメントを利用するのも一つの方法です。
ただし、ビタミンDの過剰摂取は高カルシウム血症を引き起こし、倦怠感や吐き気などの症状の他、腎機能にも影響することがあるため注意が必要です。各サプリの用法用量を守り、同成分を含む複数のサプリを服用することは避けましょう。
まとめ
ビタミンDは、骨と免疫を支える太陽のビタミン。
不足すると体の土台が弱くなり、心身の不調にもつながることがあります。
食事+日光浴で、無理なく取り入れるのがポイント。
サプリを使う場合は、摂りすぎにも注意しましょう。
参考文献
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
- Vitamin D Regulation of Immune Function
- The Role of Water-Soluble Vitamins and Vitamin D in Prevention and Treatment of Depression and Seasonal Affective Disorder in Adults
- Vitamin D and Skeletal Muscle: Current Concepts From Preclinical Studies
- 厚生労働省「国民健康・栄養調査」2022 第1部 栄養摂取状況調査の結果
- 国立環境研究所HP「肌にダメージを与えない範囲で、最適な紫外線照射時間を広く知らせる」

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