年末年始の食べ過ぎ・飲み過ぎ後の不調を整える食事【薬剤師が解説】

お正月明け、
「少し胃が重い」
「なんとなくだるさが抜けない」
そんな小さな不調を感じていませんか。

年末年始は、クリスマスに忘年会や新年会、お正月料理などが続き、どうしても食べ過ぎ・飲み過ぎになりやすい時期です。楽しい時間を過ごした結果の不調は、決して特別なことではありません。

この時期の不調は、気合や我慢の問題ではなく、胃腸や肝臓に一時的な負担がかかっていることが原因で起こるものです。だからこそ大切なのは、無理に食事を減らすことではなく、体をいたわりながら整えていくこと

この記事では、年末年始の食べ過ぎ・飲み過ぎで体の中に何が起きているのかを整理しながら、回復を助ける食事と栄養の考え方を、できるだけ分かりやすくお伝えします。
「お正月明け、何を食べたらいいか分からない」という方のヒントになれば嬉しいです。

目次

食べ過ぎ・飲み過ぎで体の中では何が起きている?

年末年始に続く食べ過ぎや飲み過ぎは、体に一気に負担をかけます。
特に影響を受けやすいのが、胃腸と肝臓です。

胃腸が休む時間を失っている

食事の量や回数が増えると、胃や腸は常に消化・吸収の作業を続けることになります。
本来、胃腸は「動く時間」と「休む時間」を繰り返しながら働いていますが、食べ続けることで休む間がなくなってしまいます。

出やすい胃腸症状
  • 胃もたれ
  • 胃の不快感
  • お腹の張り
  • 便秘・下痢

肝臓がフル稼働状態に

お酒を飲むと、アルコールは肝臓で分解・処理されます。
さらに、脂っこい料理や甘いものが重なると、肝臓はアルコール処理と栄養の代謝を同時に行わなければなりません。

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、疲れていても自覚症状が出にくい臓器です。
しかし負担が続くと、次のような全身症状が現れてきます。

肝臓の不調で出やすい症状
  • だるさ
  • 疲れが抜けにくい
  • 朝スッキリ起きられない

塩分・脂質・糖質が過剰になりやすい

年末年始の食事は、

  • 味付けが濃い
  • 揚げ物や肉料理が多い
  • お菓子やデザートが増えやすい

といった特徴があります。
そのため、塩分・脂質・糖質が自然と多くなり、体内のバランスが崩れやすくなります。

その影響で、顔や足のむくみ、肌荒れなどを感じる方も少なくありません。


まっきー

こうした不調は、「食べ過ぎたからダメ」というサインではなく、今は少し休ませてほしい、整えてほしいという体からのサインです。

次の章では、年末年始に多い不調をもう少し具体的に整理していきます。
当てはまるものがないか、チェックしながら読んでみてください。

年末年始に起こりやすい不調チェック

食べ過ぎ・飲み過ぎの影響は、すぐに強い症状として出るとは限りません。
「なんとなく調子が悪い」という形で現れることも多いものです。

以下の中に、当てはまるものはありますか?

年末年始の不調チェックリスト

✓胃腸まわりの不調

□ 胃が重い、胃もたれを感じる
□ 食後にお腹が張りやすい
□ 胃がキリキリする、ムカムカする
□ 便秘や下痢になりやすい

✓全身のだるさ・疲れ

□ だるさ・疲れが抜けない
□ 体が重く、動き出しがつらい
□ しっかり寝ても朝スッキリ起きられない

✓肌や見た目の変化

□ 肌が荒れやすい
□ 乾燥がひどくなった
□ 顔や足がむくんでいる
□ 体重が急に増えた

いくつ当てはまりましたか? チェック結果から分かること

当てはまる項目の内容によって、体が出しているサインは少しずつ異なります。

胃腸まわりの項目が多かった方
→ 消化に負担がかかり、胃腸が疲れている状態です。
「量を減らす」よりも、「消化しやすい食事」を意識することが回復の近道になります。

だるさ・疲れの項目が多かった方
→ 肝臓がアルコールや栄養の処理でフル稼働している可能性があります。
回復を助ける栄養が不足しているサインでもあります。

肌やむくみの項目が気になった方
→ 塩分や糖質の摂りすぎによって、体のバランスが乱れている状態。
水分やミネラル、たんぱく質の意識がポイントになります。

いくつかの項目にまたがって当てはまった方も多いかもしれません。
年末年始の不調は、ひとつの原因だけで起こることは少なく、複数が重なっていることがほとんどです。


次に大切なのは「どう整えるか」

チェックで見えてきた体のサインをもとに、次の章では、食べ過ぎ・飲み過ぎ後の回復を助けるために意識したい栄養の考え方と、具体的な食事のヒント「胃腸」「肝臓」「肌・むくみ」それぞれの不調ごとに紹介していきます。

食べ過ぎ・飲み過ぎ後の回復を助ける栄養ケア

年末年始の不調を整えるために大切なのは、「何を我慢するか」ではなく、体が回復しやすい環境をつくることです。

ポイントは大きく分けて3つあります。

  • 胃腸を休ませながら、必要な栄養はきちんと入れる
  • 肝臓の回復を助ける栄養を意識する
  • むくみ・肌トラブルを防ぐための栄養ケア

これらのポイントで共通して大切になるのが「たんぱく質」です。
胃腸・肝臓・肌のどれにとっても、回復や修復の材料になるため、形を変えて何度か登場します。

① 胃腸を休ませながら、必要な栄養はきちんと入れる

食べ過ぎ・飲み過ぎの後は、
「胃腸を休ませたいから、食事を抜いた方がいいのでは?」
と感じる方も多いかもしれません。

しかし、食事を極端に減らしてしまうと、回復に必要なエネルギーや栄養まで不足しやすくなります。
大切なのは、量を控えながら、消化しやすい形で栄養を入れることです。

胃腸の負担をかけにくい食べ方のポイント

  • 脂っこいものを控える
  • よく噛める、やわらかい調理法を選ぶ
  • 一度にたくさん食べない

この他にも「消化を助ける食材を取り入れる」「エネルギー源とたんぱく質を少量ずつ摂る」ことも重要なポイント。

消化を助ける食材を上手に取り入れる

胃腸が疲れているときは、消化をサポートしてくれる食材を選ぶのもひとつの方法です。

食材特徴
大根消化酵素を含み、胃の負担を和らげやすい
長芋消化酵素を含み、エネルギー補給にも役立つ
かぶやわらかく、胃腸が弱っているときでも食べやすい
しょうが体を温め、胃腸の働きをサポートする
まっきー

これらを、煮る・蒸す・すりおろすなどの調理法で取り入れると、胃腸を休ませながら栄養を補いやすくなります


エネルギー源とたんぱく質は「少量ずつ」

回復のためには、エネルギー源となる炭水化物や、体の修復に必要なたんぱく質も欠かせません。おかゆやうどん、雑炊などで炭水化物を少量取りつつ、卵、豆腐、白身魚など、消化しやすいたんぱく源を組み合わせるのがおすすめです。
ただし、これらの食材でも、早く回復させようとしてたくさん食べ過ぎるのはNG。回復する前の胃腸にとって負担となり、ますます胃腸が疲れてしまいます。あくまで少量ずつがポイントです。

まっきー

「胃腸を休ませる=食べない」ではなく、胃腸にやさしい形で整えていくことが、回復への近道になります。

② 肝臓の回復を助ける栄養を意識する

肝臓は、体の中で多くの代謝や解毒を担う重要な臓器です。食べ過ぎ・飲み過ぎが続くと、肝臓はアルコールの分解や栄養の代謝でフル稼働の状態になります。
このときに大切なのは、肝臓の働きを「止める」ことではなく、きちんと回復できる材料を届けることです。

肝臓の回復にもたんぱく質は欠かせない

たんぱく質は、食べ過ぎ飲み過ぎでフル稼働の肝臓を支え、修復するためにも欠かせません。飲み会が続いたり、食事量が偏ったりすると、意外とたんぱく質が不足しがちになります。
回復途中では1度にたくさん摂れなくても構いません。毎食少しずつを意識することがポイントです。

ビタミンB群で、代謝の流れを支える

アルコールの分解や、摂りすぎた栄養をエネルギーとして使う過程には、ビタミンB群が欠かせません。ビタミンB群が不足すると、「だるさが抜けにくい」「疲れが残りやすい」といった不調につながりやすくなります。

胃腸に負担をかけにくく、「たんぱく質+ビタミンB群」をセットで摂れるものとしては、

  • 豆腐・納豆などの大豆製品
  • 白身魚
  • 鶏むね肉

などが取り入れやすいでしょう。

まっきー

その他、玄米や雑穀米も、アルコール分解を助けるビタミンB群のナイアシンやB1を含むためおすすめです

飲み過ぎた翌日は、貝類を取り入れるのも一案

飲み過ぎた翌日や、肝臓の負担を強く感じるときには、しじみやあさりなどの貝類を取り入れるのもひとつの方法です。貝類に含まれるタウリンやオルニチンは、肝臓の働きをサポートする成分として知られています。

二日酔い予防として貝類を取り入れるのなら、お酒を飲む前または飲んでいる最中がベスト。ですが、飲み過ぎにより疲れた肝臓を回復させるためには、飲み過ぎた翌日から数日かけて味噌汁などで取り入れるのでも十分です。

まっきー

貝類にもたんぱく質やビタミンB群が含まれ、ミネラル豊富な点もおすすめポイントです


肝臓の回復は、1日で完了するものではありません。
無理にリセットしようとせず、数日かけて、必要な栄養を補いながら整えていくことを意識しましょう。

③ むくみ・肌トラブルを防ぐための栄養ケア

食べ過ぎ・飲み過ぎが続いたあとは、内臓への負担や体内の水分バランスの乱れによって、肌荒れ・乾燥・くすみ・むくみといった不調が出やすくなります。
このタイミングで意識したいのは、肌の材料を増やすことよりも、体の中の巡りを整え、ダメージを受けた環境を立て直すことです。

主役になる栄養素

● ビタミンA・C・E
食べ過ぎ・飲み過ぎによって増えやすい酸化ストレスから、肌細胞を守る働きがあります。
血流や代謝のサポートにも関わるため、くすみや肌のごわつき対策にも有効です。

ビタミンAレバー、にんじん、ほうれん草 など
ビタミンCキウイ、ブロッコリー、小松菜 など
ビタミンEアーモンド、かぼちゃ、植物油 など

● ミネラル(カリウム・マグネシウム)
余分な水分や塩分の排出を助け、むくみ・だるさの軽減をサポート。
血流や筋肉の緊張緩和にも関わるため、肌の巡りを整える土台になります。

カリウム芋類、果物、海藻、豆類 など
マグネシウム海藻、ナッツ類、豆類、雑穀 など

補助的に意識したい栄養素

● たんぱく質・ビタミンB群
直接的な肌ケアというより、代謝・回復を底支えする栄養素です。
肌の修復やターンオーバーを支えるため、主役栄養素と一緒に不足しないよう意識します。

例えば…

  • 豆腐・納豆などの大豆製品
  • 白身魚
  • 鶏むね肉
  • 玄米
まっきー

飲み過ぎ食べ過ぎの後は、自覚がなくても胃腸も弱っていることが多いため、消化しやすいたんぱく源を選んでみましょう

栄養素の働きについてより詳しく知りたい方は▼こちら▼も合わせてご覧ください。
【たんぱく質】:たんぱく質の働きとは? 不足するとどうなる? 基礎からわかる3つの役割
【ビタミンB群】:ビタミンB群とは?種類・働き・不足サイン・食材
【ビタミンC】:正しいビタミンCの基本!免疫・疲労回復・美容への影響と摂取方法
【ビタミンE】:ビタミンEの働きとは?不足症状・摂取量・食事での摂り方をわかりやすく解説

回復期におすすめの食事例

年末年始の食べ過ぎ・飲み過ぎのあとに大切なのは、数日かけて体を通常モードに戻していくことです。
ここでは、回復期に取り入れやすい食事例を目的別に紹介します。

胃腸が重い・食欲があまりないとき

食べ過ぎ・飲み過ぎのあとは、胃腸が疲れて消化力が落ちやすくなっています。
この時期は無理に量を増やすより、消化しやすい形で、回復に必要な栄養を少しずつ入れていくことが大切です。

食事例
  • おかゆ+卵/豆腐
  • 具だくさん味噌汁(大根・人参・豆腐・わかめなど)
  • うどん(やわらかめ)+刻み野菜・鶏ひき肉
まっきー

「食べられる量」でOK。無理に品数を増やす必要はありません

飲み過ぎた翌日・体がだるいとき

アルコールの処理で肝臓がフル稼働すると、だるさや疲れが残りやすくなります。
たんぱく質やビタミンB群を意識しつつ、水分やミネラルも一緒に補うことで、回復を後押ししやすくなります。

食事例
  • あさり・しじみの味噌汁
  • 鶏むね肉や白身魚+野菜の煮物
  • ご飯+納豆+具だくさん味噌汁
まっきー

ご飯・味噌汁・おかず のように、定食のような組み合わせを意識してみてください。おかずは脂っこいものより消化にやさしいものを選ぶと◎

むくみ・肌荒れ・乾燥が気になるとき

食事が乱れると、水分バランスや血流が崩れやすく、むくみや肌トラブルにつながります。
この時期は抗酸化や巡りを意識しながら、ビタミンやミネラルを中心に整えていくのがおすすめです。

食事例
  • 野菜たっぷりスープ(キャベツ・小松菜・きのこなど)
  • 鮭・サバなどの魚料理+副菜
  • フルーツ少量(みかん・キウイなど)
まっきー

甘いものを欲していたら、お菓子よりも「果物+食事」の形がおすすめです

「何を作るか考えたくない日」の組み合わせ例

体が疲れているときほど、「考えなくても大きく崩れない食事」が助けになります。
主食・たんぱく質・汁物を軸にしたシンプルな組み合わせを、いくつか持っておくと回復期が楽になります。

食事例
  • ご飯+具だくさん味噌汁+納豆
  • おにぎり+スープ+ゆで卵
  • 冷凍うどん+野菜+卵
まっきー

考えなくても栄養が大きく崩れない型を普段からいくつか持っておくと安心です

回復期の食事は、1食ごとの完璧さよりも、数日単位で整えていく意識が大切です。
胃腸や体調の様子を見ながら、食べられるものを選んでいきましょう。

まっきー

年末年始の食事は「乱れ」ではなく「イベント」。
少しずつ戻していく意識で十分です。

年末年始後にやりがちなNG・注意点

食べ過ぎ・飲み過ぎのあと、「早く元に戻さなきゃ」と思うほど、逆効果になる行動を取りがちです。
回復期に避けたいポイントを確認しておきましょう。

NG① 急に食事量を極端に減らす・食べない

「胃を休ませたいから」と、食事を抜いたり極端に量を減らしたりすると、かえって回復に必要なエネルギーや栄養が不足してしまいます。

特に肝臓や胃腸の回復には、少量でも継続的な栄養補給が欠かせません。
食べられる範囲で、消化しやすいものを選ぶことが大切です。

NG② 野菜やスープだけで済ませる

野菜中心の食事は一見ヘルシーに見えますが、たんぱく質が不足すると、回復が遅れやすくなります。

回復期は「軽い食事=栄養が少なくていい」わけではありません。
豆腐・卵・魚・鶏肉など、少量でもたんぱく質を添える意識を持ちましょう。

NG③ 早く取り戻そうとしてサプリに頼りすぎる

疲れや肌荒れを感じると、「とりあえずサプリで何とかしよう」と考えがちです。

サプリは補助的な手段としては有効ですが、土台となる食事が整っていないと、十分に活かされにくくなります。
まずは食事のリズムと内容を戻すことを優先しましょう。

NG④ 水分をあまり摂らない

むくみが気になると、水分を控えたくなることがありますが、水分不足は老廃物の排出を妨げ、回復を遅らせる原因になります。一気にたくさん飲むのではなく、こまめに水分をとることを意識してみてください。

NG⑤ 「もう終わったから」と不調を放置する

年末年始が終わると、忙しさの中でだるさや胃の重さをそのままにしてしまいがちです。

軽い不調のうちに整えておくことで、長引く疲れや体調不良を防ぐことにつながります。
「今は回復期」と意識するだけでも、行動は変わります。

まっきー

回復期に大切なのは、早く戻すことより、無理なく戻すこと。頑張りすぎず、体の声を聞きながら、少しずつ日常のリズムを取り戻していきましょう

まとめ|年末年始の食べ過ぎ・飲み過ぎは、ゆっくり整えれば大丈夫

年末年始は、食事やお酒を楽しむ特別な時間。
食べ過ぎ・飲み過ぎてしまうのは、決して珍しいことではありません。

年末年始の食べ過ぎ・飲み過ぎによる不調は、正しい食事と栄養の意識で無理なく整えることができます。大切なのは、「なかったことにしよう」と無理をするのではなく、今の体の状態を知り、少しずつ整えていくことです。

胃腸が疲れていれば休ませながら栄養を入れる。
肝臓が頑張っていれば、回復を助ける食事を選ぶ。
むくみや肌荒れがあれば、巡りや抗酸化を意識する。

こうした積み重ねが、体を自然なリズムへ戻してくれます。

回復期の食事は、完璧である必要はありません。
数日かけて整えば十分ですし、「今日はこれくらいでいい」と思える余白も大切です。

年末年始を楽しんだあとの体に、少しだけやさしい選択を。
それが、次の日常を軽やかに始める一歩になります。

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