こんにちは、薬剤師のまっきーです。
秋といえば、さつまいもの季節ですよね。焼き芋に大学芋、スイートポテト……。甘くてホクホクした食感が楽しめるさつまいもは、食物繊維が豊富なことで知られていますが、その他にも「準完全栄養食品」と呼ばれるほど”栄養の宝庫”だとご存知でしたか?
今回の記事では、さつまいもに含まれる栄養素(特にビタミンC・食物繊維・ミネラルなど)と、それらがもたらす健康効果、さらに“栄養を活かす食べ方”までを、薬剤師目線でわかりやすく解説します。
さつまいもの主な栄養素

秋の味覚・さつまいもは「栄養の宝庫」
さつまいも(学名 Ipomoea batatas)は、でんぷんを主成分とする根菜ですが、ただのエネルギー源にとどまらず、「準完全栄養食品」と称する研究者もいるほどのポテンシャルを秘めています。
食物繊維が豊富なことは有名ですが、その他にもビタミンやミネラル、さらには抗酸化作用のあるポリフェノールまで幅広く含むことが、最新の栄養研究でも認められてきました。(参考文献①)
そんなさつまいもに含まれる主な栄養素を見ていきましょう。
ビタミンC — 加熱に強く、肌と免疫をサポート
ビタミンCは、コラーゲン生成、免疫機能の維持、抗酸化作用などに関わる重要な栄養素です。その働きによって、感染症リスクを下げたり、疲労回復をしたり美肌などの美容効果が得られたりします。(*ビタミンCの働きについて詳しく知りたい方はこちらをクリック)
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さつまいもに含まれるビタミンC量は可食部100gあたり29mgです。
ビタミンCは一般的には熱や水に弱く、調理で損失されやすいとされています。ですが、さつまいもに含まれているビタミンCは、他の野菜と比べて加熱後の残存率が高いです(参考文献②)。
この理由については諸説あり、これだ!と断言できる状態ではありません。ネット上では「ビタミンCがでんぷんに包まれていることで熱から保護されているから」という説をよく見かけますが、明確な根拠は見つかりませんでした。
その他、「加熱時に皮ごと調理することでビタミンCの流出を防止するから」「そもそもビタミンC自体が熱に弱くない」といった説もあるようです。

個人的には、ビタミンCは水溶性ビタミンなので「加熱時に皮ごと調理することでビタミンCの流出を防止する」というのはあり得るかなと思いました
食物繊維 — 腸を整え、便秘を予防
食物繊維は、腸内環境を整え、便通を促し、血糖値の急激な上昇を抑える効果も期待されます。食物繊維は大きく分けると水溶性と不溶性の2種類があり、それぞれ働きが異なります。
・水溶性食物繊維:便の水分量を増加し、便を柔らかくする。腸内細菌のエサとなり短鎖脂肪酸を生成。
・不溶性食物繊維:大腸を刺激し、腸管運動を活性化
(参考文献③)
さつまいもに含まれる食物繊維は、可食部100gあたり水溶性0.9g、不溶性1.8gと両方がバランス良く含まれています。100gあたりで見ると繊維量が少なく感じるかもしれませんが、さつまいもの重さは中くらいのサイズで1本あたり約200g。大きいものだと300gを超えるため、焼き芋などで1本食べるとかなりの量の食物繊維を摂取可能です。
特に注目すべきは、さつまいもの皮に含まれている食物繊維の量が豊富な点です。皮の有無で100gあたりの食物繊維量は0.6gも異なります。さらに、さつまいもの皮から抽出した食物繊維を用いた発酵実験では、乳酸菌(ビフィズス菌など)の割合を増やす効果が示されています(参考文献④)。



より効率よく食物繊維量を摂りたい場合は、皮ごと食べるのがおすすめです
さらにさつまいもは、「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」という注目の成分も含んでいます。
食物繊維と似た働きをもっていて、その名の通り小腸で消化されにくく、大腸まで届いて腸内細菌のエサになる成分。腸で発酵されると「酪酸」などの短鎖脂肪酸が作られ、腸内環境を整えたり、免疫や代謝をサポートしてくれます。さらに大腸も刺激して、腸管運動を促すことも分かってきました。(参考文献⑤)。
また、でんぷんを含む食材を加熱後に冷ますと、このレジスタントスターチが増えることが報告されています(参考文献⑥)。つまり、冷やし焼きいもや冷製スイートポテトなどにすることで、より腸にうれしい食べ方になるのです。



冷ました後の再加熱では、レジスタントスターチが消化性のでんぷんに戻りにくいとされています
カリウム — 塩分排出をサポート、むくみを防ぐ
さつまいもには、体の調子を整えるミネラル「カリウム」が豊富に含まれています。カリウムは、体内の余分なナトリウムを排出し、血圧の上昇を防ぐ働きがあります。そのため、塩分を摂りすぎがちな現代の食生活において、高血圧予防やむくみの改善に役立つ成分です。
また、カリウムは筋肉の収縮や神経の伝達にも関わるため、筋肉のけいれんを防いだり、疲労回復をサポートする作用もあります。
さつまいも1本(約200g)には約700mg前後のカリウムが含まれ、これはバナナ1本分を上回る量です。
カリウムは水に溶け出す性質があるので、焼きいもや蒸しいもなど水を使わない調理法を選ぶと、効率よく摂取できます。



おいしく食べながら、塩分バランスを整えたい人にぴったりの食材です
抗酸化成分(β-カロテン・ポリフェノール類)— 美容と老化予防に貢献
さつまいもには、抗酸化作用をもつ成分が豊富に含まれています。
まず注目したいのがβ-カロテンです。特にオレンジ色のさつまいもに多く含まれ、体内でビタミンAに変換されることで、皮膚や粘膜の健康維持、免疫力の向上、視力の維持に役立ちます。また、β-カロテン自体にも強い抗酸化作用があり、活性酸素によるダメージから細胞を保護。アンチエイジングや生活習慣病の予防に貢献します。
さらに、紫色や赤紫色のさつまいもにはポリフェノール類(アントシアニンやクロロゲン酸など)が多く含まれています。これらも抗酸化力が高く、血管の健康維持や炎症の抑制により、動脈硬化や高血圧の予防にも効果が期待されています。さつまいもの抗酸化成分は種類によって異なりますが、色の違いは成分の違いを反映しており、さまざまな色のさつまいもを食べることで、幅広い健康効果を得ることができます(参考文献⑦)。



加熱調理の方法によって各栄養素の生体利用率(体が使える形での吸収率)は変わるという報告もあります。どの栄養素を摂るかによって調理方法の工夫が必要です(参考文献⑧)
さつまいもの健康効果


ここまでの栄養素を踏まえて、さつまいもが持つ健康効果の可能性を具体的に整理しておきます。
1. 腸内環境の改善
さつまいもには水溶性・不溶性の食物繊維が豊富。さらにレジスタントスターチ(難消化性でんぷん)という食物繊維と同様の働きを持つ成分も含まれています。
これらの成分は大腸で善玉菌のエサとなることで短鎖脂肪酸が生成され、腸内フローラを整える効果が期待されます。さらに大腸を刺激することで腸の蠕動運動もサポート。便通改善やお腹の張りの軽減にもつながります。



加熱後に冷ますとレジスタントスターチが増えるため、より腸活に適した状態で食べるには、焼き芋アイスがおすすめです
2. 免疫力のサポート
さつまいもに含まれるビタミンCやβ-カロテンは、免疫細胞の働きをサポートする栄養素です。
ビタミンCは白血球の活動を助け、ウイルスや細菌に対する防御力を高めます。β-カロテンは体内でビタミンAに変わり、皮膚や粘膜の健康を維持することで外部刺激から体を保護。
さらにアントシアニンやクロロゲン酸などのポリフェノールが持つ抗酸化作用も、活性酸素から免疫細胞を守ります。



さつまいもが旬を迎える秋は体調を崩しやすい季節。旬の味覚で免疫ケアしましょう
3. 美肌・アンチエイジング
β-カロテンやポリフェノール類などの抗酸化成分を含むさつまいもは、美肌効果やアンチエイジングにも効果が期待されます。
活性酸素の影響を受けやすい皮膚細胞を保護し、メラニンの生成を防止。シミやシワを防ぎます。さらに、ビタミンCもコラーゲン生成を助けるため、弾力ある肌を維持。
さつまいもに含まれるアントシアニンは血流改善にも関わるため、カリウムの塩分排出作用と併せて、顔や足のむくみ防止にもつながります。
4. エネルギー補給と疲労回復
さつまいもは炭水化物が主成分で、かつては日本でも主食として活躍したこともあるエネルギー源です。食物繊維が豊富で穏やかに糖質を吸収するため、持続的なエネルギー補給に向いています。
さらに、ビタミンCやポリフェノールの抗酸化作用で、運動後の筋肉疲労やだるさの回復をサポート。カリウムはナトリウムとバランスをとり、体内の水分や電解質を整えることで、疲労感やむくみの軽減にもつながります。
朝食や間食にさつまいもを取り入れることで、日中の活力維持に役立ちます。



低GI食品で腹持ちが良いので、ダイエット中のエネルギー源にもおすすめです
5. 生活習慣病予防
さつまいもは食物繊維やレジスタントスターチを含むため、血糖値の急上昇を抑える効果があり、糖尿病予防に役立つ可能性があります。
また、カリウムの働きで血圧のコントロールをサポートし、高血圧や心血管疾患のリスク低減の可能性も。
さらに、抗酸化物質による細胞保護作用は、脂質代謝や血管の健康維持にも関与。日常的にさつまいもを取り入れることで、生活習慣病対策の一助となります。
さつまいもの栄養を活かす食べ方のコツ


せっかく良い栄養素を含んでいても、調理や保存で損失していてはもったいないですよね。ここでは、さつまいもの栄養をできるだけ保持・活用するための工夫を紹介します。
栄養素・成分 | 効果のポイント | 食べ方のコツ |
---|---|---|
ビタミンC | 免疫サポート・美肌 | 水溶性なので、スープや味噌汁に入れて汁ごと摂ると効率的 |
β-カロテン | 抗酸化・肌の健康維持 | 油と一緒に調理すると吸収率アップ(例:バター炒め、天ぷら) |
食物繊維・レジスタントスターチ | 腸内環境改善・便通促進 | 加熱後に冷ますと増える(例:冷やし焼きいも、サラダ) |
カリウム | むくみ・血圧対策 | 茹でるより蒸す・焼くと損失が少ない |
ポリフェノール類(アントシアニンなど) | 抗酸化・血流改善 | 皮ごと調理で抗酸化成分を逃さない |
まとめ — 秋の味覚で健康をサポート
秋の定番食材・さつまいもは、「甘くてホクホク」なだけではなく、ビタミンC、食物繊維、抗酸化物質など、健康・美容に関わる多彩な栄養素を持つ食品です。
ただし、調理や保存方法次第で栄養が失われるリスクもあるため、調理方法に工夫が必要です。
- 主な栄養素:ビタミンC・食物繊維・カリウム・抗酸化物質
- 主な健康効果:腸内環境改善・免疫力向上・美肌・疲労回復・生活習慣病予防
- 食べ方のコツ:汁物に入れる・蒸す or 焼く・加熱後に冷ます・油と合わせる・皮ごと食べる
本記事を通じて、「さつまいも=ただのおやつ」から「健康を促す優れた食材」へと認識が変化していただければ嬉しいです。
それでは今回はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました!
参考文献
- “Sweet Potato Is Not Simply an Abundant Food Crop” — Laveriano-Santos et al. 2022 PMC
- “サツマイモの栄養機能成分と焼き芋の美味しい焼き方理論” 日本いも類研究会
- Chronic Constipation: Is a Nutritional Approach Reasonable? MDPI
- Positive effects of dietary fiber from sweet potato [Ipomoea batatas (L.) Lam.] peels by different extraction methods on human fecal microbiota in vitro fermentation Frontiers
- Health benefits of resistant starch: A review of the literature, 2019 サイエンスダイレクト
- Studies on effect of multiple heating/cooling cycles on the resistant starch formation in cereals, legumes and tubers PubMed
- Sweet Potato Is Not Simply an Abundant Food Crop: A Comprehensive Review of Its Phytochemical Constituents, Biological Activities, and the Effects of Processing PMC
- Cooking sweetpotato roots increases the in vitro bioaccessibility of phytochemicals and antioxidant activities, but not vitamin C サイエンスダイレクト
- 日本食品標準成分表2020年版(八訂) 文部科学省