こんにちは、薬剤師まっきーです。
まだまだ残暑が厳しいですが、朝晩は涼しいと感じることが増えてきましたね。虫の鳴き声も聞こえてきて、だんだん秋になってきているんだなと感じます。
そんな季節の変わり目ですが、この時期になると体調を崩しがちって方いませんか?
実際、私が勤める薬局でも風邪や新型コロナ陽性の方が増えています。しかもまだ9月なのに、インフルエンザの陽性患者まで出ています。ニュースなどでも取り上げられていましたね。
秋は気温差や湿度の変化が大きく、自律神経の乱れや免疫力の低下が起こりやすい時期。そのため「風邪をひきやすい」「疲れやすい」と感じる方が多い季節です。秋バテなんて言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?
そこで今回は、薬剤師の視点から 最近の論文・エビデンスを交えつつ、秋におすすめの栄養素と食材 をご紹介します。
秋に不調を感じやすい…その症状は?

暑い夏を乗り切って、やっと過ごしやすくなったと思ったら体調を崩してしまった。そんな経験ありませんか?
季節の変わり目は体調を崩しやすい方が多いですが、秋は特に気を付けたい季節。真夏に消耗した体力が回復しきらないうちに、昼夜の寒暖差や日照時間の変化に身体が対応しきれず、自律神経が乱れたり免疫力が低下したりしやすいのです。
その結果、次のような症状が引き起こされやすくなります。
・風邪をひきやすい
・疲労感、だるさ、身体の重さ
・意欲の低下、集中力の低下
・寝つきが悪い、眠りが浅い
・食欲の低下、胃もたれ
・身体の冷え、頭痛、めまい など

これらの症状改善には普段の食事からもサポートできます
秋の不調対策に効果が期待される栄養素(最新研究より)


秋の不調として様々な症状がありますが、その主な原因として考えられているのは自律神経の乱れと免疫力の低下。この2つの原因を解消すれば、秋の不調に関するお悩みが解決できるかもしれません。
ここからは、自律神経の乱れと免疫力低下の改善に効果が期待できる栄養素について、エビデンスを交えながら見ていきましょう。
ビタミンC:風邪症状の重症度を下げる
免疫力アップと言えばビタミンC!というくらいお馴染みの栄養素ですよね。
ビタミンCは白血球の働きを強化したり、抗酸化作用で細胞を保護したり、コラーゲン合成を促して皮膚や粘膜を強化したりすることで免疫力の維持に関与しています。(参考文献①)
最近の研究では、1日あたり1,000mg以上のビタミンC摂取で風邪症状の重症度が約15%低減したという報告もあります。(参考文献②)
ちなみに、厚労省による成人のビタミンC推奨量は1日100mg。現代人の多くは、これよりも摂取量が少ないとされています。日頃から意識して取り入れないとなかなか1000mgには届かないので、まずはできる範囲でビタミンCの多い食材を積極的に食べるようにしてみましょう。(参考文献③)
ビタミンCの多い食材例
柿、みかん、キウイ、赤ピーマン、ブロッコリー、サツマイモ など



ビタミンCは何かと不足しがち。1日のなかでこれらの食材を組み合わせて、効率良く摂取しましょう
ビタミンD:免疫応答をサポート
ビタミンDは、骨を作るために重要なカルシウムの吸収を促すことが知られていますが、免疫力にも関与していることがわかってきました。
2019年に発表された研究では、ビタミンDの補充がインフルエンザワクチンへの免疫応答を改善したとの報告があります 。(参考文献④)
ビタミンDは日光を浴びることで体内で合成されますが、秋は日照時間が短くなっていくため不足しやすくなります。
食材からも摂取することが可能なので、積極的に食べてみてください。
ビタミンDの多い食材例
鮭、サンマ、きのこ類、卵黄 など



秋に旬を迎える食材が多いので、旬のものを食べるのは理にかなっているのかもしれませんね
鉄:疲労感・冷え対策に重要
鉄分が不足すると貧血になることはご存じの方も多いはず。貧血になるとめまいや疲労感など様々な症状が引き起こされます。



貧血とはヘモグロビン濃度が基準値を下回った状態を言います
ところが、ヘモグロビン濃度は基準値内でも、鉄分が不足している隠れ貧血という状態の人も多くいることが、複数の論文で示唆されています。(参考文献⑤、⑥)この隠れ貧血の状態でも、疲労感や冷え性などの症状が出てしまうことがあります。(参考文献⑦、⑧)
隠れ貧血で疲労感などの症状を訴えている人が、鉄分の補給で改善したと報告されている研究もあります。(参考文献⑨)
鉄の多い食材例
赤身肉、レバー、カツオ、ほうれん草、ひじき など



植物性の食材から鉄を多く摂取する時は、ビタミンCも摂取すると吸収率がアップします
マグネシウム:自律神経の乱れを改善
マグネシウムは体内の様々な酵素を活性化に関わっています。身体のいろいろな組織・細胞の働きに関わっているため、マグネシウムが不足すると自律神経のバランスが崩れる可能性も指摘されています。



マグネシウムはお酒の飲み過ぎや過度なストレスなどで不足しやすくなります(
参考文献⑩)
マグネシウムを補給すると、自律神経のバランスを示す指標の心拍変動が改善が期待できます。(参考文献⑪)
マグネシウムが多い食材例
アーモンド、玄米、ひじき、かぼちゃ、サンマ など
薬剤師としての注意点
今回紹介した栄養素は不足しがちな人も多い栄養素です。それぞれの栄養素を多く含む食材を組み合わせて、上手に摂取して欲しいですが次のような注意点もあります。
・ビタミンC:一度に大量摂取すると下痢や胃部不快感などの消化器症状の原因に。
・ビタミンD:骨粗しょう症の薬(アルファカルシドール、エルデカルシドールなど)やサプリを服用している人は過剰摂取に注意
・鉄、マグネシウム:一部の抗生剤(テトラサイクリン系、ニューキノロン系など)と同時に摂取すると吸収を低下させる恐れがある(30分以上あければ問題ない)
日本で承認された医薬品やサプリであれば上限量まで余裕もあるので、食事と組み合わせても過剰摂取となる心配はそこまでありません。
医薬品やサプリを服用中の方は、必ず決められた用法用量を守るようにしましょう。



外国から個人輸入するサプリでは高用量のものもあるため、上限量を超えないよう注意してください
なお、医師などの医療従事者から各栄養素について摂取量の制限を設けられている方は、その指示に従ってください。
秋の不調におすすめの栄養素、取り入れ方は?


毎日の生活に取り入れる工夫
不足している状態を解消するには、これまでよりもちょっとした工夫が必要です。例えば…
- 朝の果物で手軽にビタミンC補給
- 昼食や夕食には魚やきのこを取り入れる
- 貧血気味の方は鉄分を意識した献立に



朝はヨーグルトxフルーツもおすすめ。腸内環境も整うので、私も取り入れています
秋の不調に効果的な料理例
秋の不調に効果的な食材を用いた料理例もいくつかご紹介します。
- 鮭ときのこのホイル焼き(ビタミンD+鉄分)
- 赤ピーマンとブロッコリーの温サラダ(ビタミンC)
- レバーとほうれん草の炒め物(鉄)
- サバ缶とミックスビーンズのカレー(鉄+マグネシウム)
まとめ:秋を元気に過ごすための栄養戦略
秋の体調不良は「気温差」だけでなく「栄養不足」も原因の一つ。最新エビデンスでは、ビタミンC・ビタミンD・鉄分・マグネシウムが不調予防に対する効果を示唆されています。皆さんもぜひ無理のない範囲で食生活に取り入れて、元気な秋を過ごしましょう。
それでは今回はここまで。最後までお読みいただきありがとうございました!
参考文献
- 免疫応答におけるビタミンC の生理学的役割
- Vitamin C reduces the severity of common colds: a meta-analysis
- 1―6 ビタミン(②水溶性ビタミン)
- Impact of Vitamin D Supplementation on Influenza Vaccine Response and Immune Functions in Deficient Elderly Persons: A Randomized Placebo-Controlled Trial
- Iron deficiency among Japanese whole-blood donors measured by serum ferritin
- Prevalence of anemia and iron deficiency and its association with body mass index in elite Japanese high school long-distance runners
- Non-anaemic iron deficiency
- Beyond anemia: a comprehensive analysis of iron deficiency symptoms in women and their correlation with biomarkers
- Efficacy of iron supplementation on fatigue and physical capacity in non-anaemic iron-deficient adults: a systematic review of randomised controlled trials
- Hypomagnesemia
- Magnesium Status and Stress: The Vicious Circle Concept Revisited