「靴下を重ねても足先が冷える」「手が氷のように冷たい」
そんな“冷え”の悩みを抱えていませんか?
冬はもちろん、季節を問わず手足が冷えるという人は少なくありません。
一見すると「体質だから仕方ない」と思われがちですが、実はその冷え、体の中の栄養バランスの乱れが関係していることがあります。
薬剤師として日々患者さんと接していると、「血のめぐり」だけでなく、「体の中で熱を生み出すための材料」が不足している方が多いと感じます。
つまり、食事で摂る栄養の質と量が、体を温める力を左右しているのです。
冷えは、単に「体温が低い」というだけではなく、疲れやすさ・肩こり・便秘・睡眠の質の低下など、さまざまな不調の引き金にもなります。
しかし、正しく栄養をととのえることで、冷えは少しずつ改善していくことができます。
この記事では、
- 冷えの原因
- 改善に必要な栄養素
- 食事でできる冷え対策
- 1日の取り入れ方のポイント
を、薬剤師の視点からわかりやすくお伝えします。
今日からできる「食べる温活」を一緒に始めましょう。
冷えの原因ー「血流」だけでなく「代謝」と「栄養」が関係

冷えというと「血のめぐりが悪いから」と考えがちですが、実際には血流の“もと”を作る栄養や、熱を生み出す代謝の力も深く関係しています。冷えの原因となる要素を解説します。
鉄・たんぱく質の不足
まず注目したいのが、鉄とたんぱく質の不足です。
鉄は血液の中で酸素を運ぶ役割を持ち、たんぱく質はその血液の材料になります。
これらが不足すると、体のすみずみまで酸素と栄養が届かず、血流が滞り、冷えを感じやすくなります。
ビタミンB群の不足
次に大切なのがビタミンB群。
体の中で食べたものをエネルギーに変える「代謝」を支える栄養素で、これが不足すると、“体が熱をつくる力”が低下します。
しっかり食べていても代謝がうまく回らなければ、体温は上がりません。
筋肉量の低下
また、筋肉量の低下も冷えの大きな原因です。
筋肉は体の“発熱器官”。とくに下半身の筋肉が衰えると、熱を生み出す力が落ち、手足が冷えやすくなります。
自律神経の乱れ
さらに、ストレスや睡眠不足などによる自律神経の乱れも見逃せません。
交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、血管の収縮や拡張がうまくコントロールできず、結果として体温調整が乱れます。
まっきー冷えを根本から改善するには、血流だけでなく、代謝を支える栄養と生活リズムの両面を整えることが欠かせません
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- 秋の不調におすすめ栄養素と食材


“体の内側から温める”5つの栄養素


冷えを改善するには、「体を温める食べ物を食べる」だけでなく、体の中で熱を生み出す力を支える栄養素を整えることが大切です。
ここでは、薬剤師の視点から特に意識したい5つの栄養素を紹介します。
| 栄養素 | 働き | 主な食材例 |
|---|---|---|
| 鉄 | 酸素を運び血流を改善 | レバー、赤身肉、ひじき |
| タンパク質 | 筋肉・代謝の材料 | 魚、肉、豆腐 |
| ビタミンB群 | エネルギー代謝UP | 豚肉、卵、玄米 |
| ビタミンE | 血行促進 | アーモンド、かぼちゃ、ごま |
| 亜鉛 | 代謝酵素を補助 | 牡蠣、牛肉、卵黄 |
1. 鉄
血液中のヘモグロビンの材料となり、酸素を全身に運ぶ働きがあります。
鉄が不足すると、細胞に酸素が届かず代謝が落ち、体が冷えやすくなります。
鉄を多く含む代表的な食材はレバーや赤身肉、ひじき、小松菜など。植物性食品に含まれる鉄はビタミンCと一緒に摂ると吸収率がアップします。
2. たんぱく質
筋肉や血液、ホルモンなど、体を作る基本の材料。
筋肉は体の“熱をつくる工場”なので、たんぱく質が不足すると冷えだけでなく、疲れやすさにもつながります。
魚、肉、卵、豆腐などをバランスよく摂るのがポイントです。
3. ビタミンB群
食べた糖や脂質、たんぱく質をエネルギーに変える際に欠かせない栄養素です。
特にB1・B2・B6・B12を意識して摂ると、体の中で「熱を生み出す代謝」がスムーズに進みます。
豚肉、卵、納豆、玄米などに多く含まれます。
4. ビタミンE
「血行のビタミン」とも呼ばれ、血管を広げて血流を促す働きがあります。
抗酸化作用も強く、冷えだけでなく肌のくすみや肩こり対策にも◎。
アーモンド、かぼちゃ、アボカドなどが代表的です。



医療現場では、冬に多い「しもやけ」症状の治療にもビタミンE製剤が使用されます
5. 亜鉛
あまり知られていませんが、亜鉛は体内の酵素の働きを助け、エネルギー産生をサポートします。
また、ホルモンバランスを整え、自律神経の安定にも関係します。
亜鉛を多く含む食材は牡蠣、牛肉、卵黄、ナッツ類などです。
これらの栄養素はどれか一つだけでなく、「豚肉の生姜焼き+玄米ごはん+小松菜の味噌汁」のように組み合わせて摂ることが大切です。



主菜・主食・副菜をバランスよく組み合わせると、自然に“温め体質”に近づけます
冷え改善におすすめの食材


“体を中から温める”を意識した食材選び
冷えを和らげるには、体を温める「熱産生」を助ける栄養と、血流を整える栄養を組み合わせるのがポイント。
例えば次のような食材がおすすめです。
| 栄養素・効能 | 食材 | コメント |
|---|---|---|
| たんぱく質(熱を生み出す“燃料”) | 豚肉、鶏むね肉、鮭、卵、豆腐 | 筋肉の材料となり、体内で熱をつくる力をサポート。ダイエット中も欠かせません。 |
| 鉄(血流と酸素運搬をサポート) | レバー、赤身肉、ひじき、あさり、小松菜 | 貧血を防ぎ、手足の冷え・だるさを軽減。女性に特に不足しやすい栄養素です。 |
| ビタミンB群(代謝を助ける) | 玄米、まぐろ、納豆、きのこ類、バナナ | 食べたものをエネルギーに変える働きがあり、体を温めやすくします。 |
| 体を温める野菜(血流促進) | にんじん、ごぼう、れんこん、かぼちゃ、しょうが | 根菜類は体の内側からポカポカに。汁物や煮物でとるのがおすすめです。 |
組み合わせのコツ
「たんぱく質+鉄+ビタミンB群」を意識して、味噌汁や炒め物に1〜2品足すだけでも十分。
毎日のごはんに無理なく取り入れることが、“続く温活”につながります。



豚肉やまぐろ、鮭などは「たんぱく質+鉄+ビタミンB群」をしっかり摂れるので特におすすめです。しょうがやれんこんなどと組み合わせると◎
実践!”食べる温活”1日のルーティン


冷えを改善するには、特別な食材や高価なサプリよりも、毎日の食事で“温める習慣”を積み重ねることが大切です。
ここでは、1日の流れに合わせて実践しやすい食べ方を紹介します。
朝:温かい味噌汁+たんぱく質
起きたばかりの体は、体温が低く代謝もまだスイッチが入っていません。
温かい味噌汁で内臓を温め、豆腐や卵を加えてたんぱく質を補いましょう。
「豆腐ときのこの味噌汁」など、手軽で栄養バランスのとれた一杯がおすすめです。
昼:玄米ごはん+豚肉と野菜炒め
活動量が増える昼は、エネルギーを生み出す“代謝系の栄養素”を意識。
豚肉にはビタミンB群が豊富で、野菜と炒め合わせることで吸収も高まります。
主食を白米から玄米に変えるだけでも、ミネラル・食物繊維が増えて代謝UPにつながります。
間食:ナッツ・黒豆・甘酒
お菓子やパンの代わりに、体を温める間食を取り入れてみましょう。
ナッツはビタミンEや亜鉛が豊富で血行促進に◎。
黒豆は鉄を補い、甘酒は“飲む点滴”と呼ばれるほど代謝サポート力があります。
冷えが気になる人は、冷たい飲み物を控えて“常温か温かい”を心がけて。
夜:鉄を意識したメイン+温かい副菜
夜は一日の疲れを回復し、体をととのえる時間。
レバーや赤身肉、ひじき、小松菜など鉄を含む食材をメインに取り入れましょう。
また、生姜やにんにく、ねぎを使った温かいスープや鍋にすることで、血流が促進されます。



無理をせず、「朝の味噌汁」「夜の温かい主菜」など、できるところから1日1つ“温め習慣”を増やしていくことが、冷え体質を改善する近道です
まとめー今日からできる “冷えない体づくり” の第一歩を
冷えは「体質だから」とあきらめてしまいがちですが、
実は食事と生活習慣の積み重ねで少しずつ改善していくことができます。
まずは、
- 朝に温かい味噌汁を飲む
- たんぱく質や鉄をしっかりとる
- 夜は体を冷やさない食材を選ぶ
このような日常の小さな習慣からでOKです。
体が温まると、代謝や睡眠の質、気分まで変わっていきます。
これらの習慣を積み重ねていくうちに「なんだか最近、冷えにくくなったかも」と感じられる日がきっと来るはずです。
参考文献
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」
- 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」
- Biological Properties of Vitamins of the B‑Complex, Part 1(M. Hrubša 他、2022年)
- 冷えと食および生活習慣との関連(佐久間友美ほか、日本、調査研究)

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