こんにちは、薬師のまっきーです。
今回は脂質の摂取量について。
脂質はあまり摂らない方が良いの?
1日の摂取量の目安はどのくらい?
こんな疑問を解消すべく学んでいきたいと思います。
まずはまとめです。
・脂質は細胞膜やホルモンを構成したり、エネルギー源として利用したりするため体に必要な栄養素
・脂質全体と一部の脂肪酸について目安となる摂取基準が設定されている
・脂質の食事摂取基準(成人)
①脂質全体:摂取エネルギー量の20~30%
②飽和脂肪酸:摂取エネルギー量の7%以下
③n-6系脂肪酸:男性:8~11g 女性:7~8g
④n-3系脂肪酸:男性:2.0~2.2g 女性:1.6~2.0g
より詳しく知りたい方はぜひ最後まで読んでみてください。
それでは、どうぞ!
脂質とは
脂質と聞くと「太りそう」「カロリーが高い」「健康に悪そう」などマイナスのイメージを持つ方も多いのではないでしょうか?
ですが脂質は私たちの体にとって大切な働きを担ってくれている重要な栄養素です。
その主な働きは3つ。
①エネルギー源となる
②細胞膜やホルモンなどを構成する
③脂溶性ビタミンの吸収を助ける
脂質の働きについてより詳しく知りたい方は次の記事も読んでみてください。
脂質が不足すると上記の働きができず、健康を損なってしまいます。
ただし、脂質の摂り過ぎもまた肥満や脂質異常症などの生活習慣病の原因になるため、注意が必要です。
摂り過ぎも不足もダメなら、どのくらいが適切な量なのか知りたいところですよね
脂質の摂取基準
脂質にはいくつかの種類がありますが、基本的には食事から摂取したものがそのまま体内に入ることはありません。
消化の過程で分解され、吸収された後にコレステロールやリン脂質などに合成されて体内で働くようになります。
そのため、脂質の種類ごとではなく、脂質全体として摂取量を考える必要があります。
ただし、不飽和脂肪酸の一部は体内で合成することができないため、個別に食品から摂取することが必須です。
また、現代の日本では昔と比べて飽和脂肪酸の摂取量が増加。
これが肥満症などの生活習慣病や循環器疾患に影響している可能性が示唆されており、過剰にならないよう留意する必要があります。
これらのことを考慮して、厚生労働省が出した食事摂取基準では、脂質に関して以下の4項目を設定。
①脂質全体
②飽和脂肪酸
③n-6系脂肪酸
④n-3系脂肪酸
それぞれ見ていきましょう。
また、飽和脂肪酸やn-3系脂肪酸など、脂肪酸について知りたい方はこちらも読んでみてください。
脂質全体
脂質全体での食事摂取基準の数値はgではなく、%で表示しています。
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年齢 | 目安量 | 目標量 | 目安量 | 目標量 |
0~5ヶ月 | 50 | ー | 50 | ー |
6~11ヶ月 | 40 | ー | 40 | ー |
1~17歳 | ー | 20~30 | ー | 20~30 |
18歳以上 | ー | 20~30 | ー | 20~30 |
・目安量:ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量
・目標量:生活習慣病の発症予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量
乳児は母乳中の脂質の割合が約50%のため、それに合わせて目安量を設定されているようです。
粉ミルクなども半分ほどが脂質となるよう作られているため、乳児については脂質のバランスを気にしなくても良いでしょう。
脂質全体の目標量は、成人では男女とも摂取エネルギー量の20~30%
仮に1日の摂取エネルギー量が2000kcalなら、脂質として44.4~66.7gとなります。
それでは、現代人の脂質の摂取量はどのくらいでしょうか?
平成28年の国民健康・栄養調査のデータでは、男性の平均は24.6%、女性の平均は27.3%
男女とも平均では目標量の範囲内ですね。
一般的な食事であれば脂質全体での過不足はないと考えられます
飽和脂肪酸
飽和脂肪酸も食事摂取基準の数値はgではなく、%で表示しています。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢 | 目標量 | 目標量 |
0~2歳 | ー | ー |
3~14歳 | 10以下 | 10以下 |
15~17歳 | 8以下 | 8以下 |
18歳~ | 7以下 | 7以下 |
・目標量:生活習慣病の発症予防のために現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量
飽和脂肪酸はエネルギー源として利用されますが、過剰になるとLDL(悪玉)コレステロール値を上昇させるリスクがあります。
また、心筋梗塞などの循環器疾患の発症リスクを上げる要因とも考えられており、過剰摂取を防ぐために目標量が設定されています。
飽和脂肪酸の目標量は、18歳以降の成人で男女とも摂取エネルギー量の7%以下
仮に1日の摂取エネルギー量が2000kcalなら、飽和脂肪酸として15.6g以下となります。
目標量に対して、現代人の飽和脂肪酸の摂取量はどのくらいでしょうか?
平成28年の国民健康・栄養調査では各世代で次のような中央値が出されています。
性別 | 男性 | 女性 | ||
---|---|---|---|---|
年齢 | g/日 | %エネルギー | g/日 | %エネルギー |
18~29歳 | 17.4 | 7.6 | 14.1 | 8.2 |
30~49歳 | 15.7 | 7.1 | 14.4 | 7.9 |
50~64歳 | 15.4 | 6.5 | 14.1 | 7.5 |
65~74歳 | 14.5 | 6.4 | 13.3 | 6.9 |
75歳以上 | 13.1 | 6.2 | 11.4 | 6.5 |
18~49歳では男女とも目標量の7%以下をオーバー。
女性は50~64歳でも目標量を超えています。
男女とも若い世代ほど飽和脂肪酸の摂取量が多いですね。
飽和脂肪酸は肉類やバター、ラードなど、比較的若い世代に好まれる食品に多く含まれているためと考えられます。
揚げ物やお菓子なども食べ過ぎには要注意ですね
n-6系脂肪酸
n-6系脂肪酸は体内で合成することができないため、食事からの摂取が必須の脂肪酸。
ところが、n-6系脂肪酸の必要量を算定するために有用な研究は未だなく、欠乏症を防ぐための推定平均必要量や推奨量を算定することができないようです。
ですが、現代の健康な日本人ではn-6系脂肪酸の不足が原因とみられる皮膚炎などの報告がありません。
そこで厚生労働省は、現代人のn-6系脂肪酸の摂取量をベースに、以下のように目安量を設定しました。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢 | 目安量 | 目安量 |
0~2歳 | 4 | 4 |
3~5歳 | 6 | 6 |
6~9歳 | 8 | 7 |
10~11歳 | 10 | 8 |
12~14歳 | 11 | 9 |
15~17歳 | 13 | 9 |
18~29歳 | 11 | 8 |
30~64歳 | 10 | 8 |
65~74歳 | 9 | 8 |
75歳以上 | 8 | 7 |
n-6系脂肪酸の目安量はg/日で表しています。
・目安量:ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量
n-6系脂肪酸はレバー、卵白、植物油などに多く含まれています。
n-6系脂肪酸も、一般的な食事ができていれば問題なさそうです
n-3系脂肪酸
n-3系脂肪酸もn-6系脂肪酸と同様に体内で合成できない必須脂肪酸ですが、必要量を算定するための研究が不十分です。
健康な日本人において、n-3系脂肪酸の不足が原因と考えられる皮膚炎等の報告はないため、現代人の摂取量をベースに目安量を設定しています。
性別 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
年齢 | 目安量 | 目安量 |
0~5ヶ月 | 0.9 | 0.9 |
6~11ヶ月 | 0.8 | 0.8 |
1~2歳 | 0.7 | 0.8 |
3~5歳 | 1.1 | 1.0 |
6~9歳 | 1.5 | 1.3 |
10~11歳 | 1.6 | 1.6 |
12~14歳 | 1.9 | 1.6 |
15~17歳 | 2.1 | 1.6 |
18~49歳 | 2.0 | 1.6 |
50~64歳 | 2.2 | 1.9 |
65~74歳 | 2.2 | 2.0 |
75歳以上 | 2.1 | 1.8 |
n-3系脂肪酸はg/日で表しています。
・目安量:ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量
n-3系脂肪酸はマグロ、サンマ、サバなどの魚類やエゴマなどに多く含まれます。
n-6系脂肪酸やn-3系脂肪酸は循環器疾患の予防や認知機能低下の予防に有効と期待されていますが、未だ十分な研究結果は出ていません。
そのためどちらも、理想的な摂取量とされる目標量の設定には至っていないようです。
n-3系脂肪酸も通常の食事では欠乏症のリスクは少ないです。
生活習慣病の予防については今後の研究に期待ですね。
おわりに
今回は脂質の摂取量について学んできました。
改めてまとめです。
・脂質は細胞膜やホルモンを構成したり、エネルギー源として利用したりするため体に必要な栄養素
・脂質全体と一部の脂肪酸について目安となる摂取基準が設定されている
・脂質の食事摂取基準(成人)
①脂質全体:摂取エネルギー量の20~30%
②飽和脂肪酸:摂取エネルギー量の7%以下
③n-6系脂肪酸:男性:8~11g 女性:7~8g
④n-3系脂肪酸:男性:2.0~2.2g 女性:1.6~2.0g
現代人の摂取量でも脂質全体の量としては、目標量の範囲内に収まっているのは意外でした。
ただ、若い世代では飽和脂肪酸が目標量よりも多く摂っているため、注意が必要です。
飽和脂肪酸を多く含む肉類や揚げ物の頻度を減らし、代わりに魚など不飽和脂肪酸を含むものの食べる頻度を増やすと良さそうですね。
それでは、今回はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました!